一日目 行方不明

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ボクは、夜遅くまで遊んでいるダメな小学生じゃなくて、義務を果たす立派な飼い主だぞ、そういう気持ちでボクは散歩を続けた。 でもちょっとドキドキしたし、ワクワクもしていた。 そんなボクのご近所探検家気分は、遠くから歩いてくる影に吹き散らされた。 同じ歩道の先から、大人が三頭の大型犬を連れて歩いてきた。 黄土色のトレンチコートに、帽子を目深にかぶっている。 関東の夏の夜には、ふさわしくないファッションだった。夏は暑い。だったら、ポロシャツにズボンじゃなかろうか。 レインコートのかわりかな……違うよな。 シロクが身構えているのがわかった。いきなり反転して逃げると、余計に吠えられそうだ。すれ違うだけなら、大丈夫だろう。あいさつは……しなくてもいいかな? ボクはクールを決め込んで、ゆっくりと歩いた。犬同士の距離は7メートルほどの距離になった。 「ガルッ! ギャウッ!! 」 突然、大型犬がシロクに噛みつこうとした。 シロクも負けじと吠える。ボクは目を見開いた。大型犬の飼い主の姿は、まだドリンク瓶ほどだ。 犬が放たれたのだ、ボクはそう思った。大型犬の一匹がシロクの首筋を狙っていた。 あわてて、シロクのリード紐を引いた。 「こいっ! 」 すると、黒い犬たちはボクにも襲い掛かってきた。 「うわわああ! 」 夜目にも犬の白い牙が見えた気がした。 ボクは一生懸命、家の方に走った。 ふりかえると、ボクはリードを握っておらず、シロクはいなかった。トレンチコートの男も、三頭の犬もいなくて、濃い灰色の空と湿ったアスファルトだけが、街灯に照らされていた。 「シロク!? シロク!? 」 ボクは愛犬の名を叫びながら、近くの道路を探し回った。きっとシロクにはこの声が聞こえるはずだ……。 「鈴原さん!? どうしたの?」 ボクは聞き覚えのある声に振り返った。 近所のお姉さんが驚いた顔で自転車で走り寄ってきていた。かごには駅前のスーパーの袋が入っていた。 「えっと、ボクの犬が、三頭の犬に……男の人が大きな黒い犬を連れていて。それがボクの犬を襲った」 ボクは落ち着いて説明しようとした。でもダメだった。 「……ボクのシロクがいなくなった」 泣き出したボクを、お姉さんはボクの家まで連れて帰ってくれた。
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