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翌日、学校から帰ったボクは家で迷い犬のポスターを描いていた。学校の帰りにも探したけど、シロクはまだ見つかっていない。
すると、玄関のチャイムがなった。
少ししてパパが、昨日会ったお姉さんを部屋まで連れてきた。
波打つ濃い茶色の肩まである髪を、うしろで軽く結い上げている。
「こんにちは、鈴原くん。昨日は大丈夫だった? 」
お姉さんはボクの昨日の様子を見て、心配になってきてくれたのだろうか。
「えっと、安藤さんのお姉さん、でしたっけ? 」
「ううん。そういえば、一回ぐらいしか名乗らなかったね。私は佐藤美奈。安藤さんの家に下宿している、大学生よ。あらためて、よろしく」
「よろしく」
安藤は同級生で、ボクは時々彼の家に遊びに行っていた。
二階建てで古い家だったが、夏は冷たい麦茶などを出してくれていた。何より夏休みにゲームをするために、小学生が集まれる家は今時貴重だ。
そういえば、今日も安藤は新しいインディーズゲームをダウンロードしたという話をしてたっけ。シロクのことが心配でよく聞いてなかった。
佐藤さんはボクの手元のポスターを見た。
「それが逃げた犬? 絵上手いね」
「これはレイアウトを決めてるだけです。実際には、シロクの写真をパソコンで張ってプリントするんです」
「今の時代の子どもなんだ。鈴原くんすごいね」
ほめられたのはうれしかったけど、ボクはシロクの絵を見つめて黙ってしまった。
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