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待機状態になったカノジョは、一連の動作を飽く事なく翼の傍らで続けている。一連の行動は、ゲームの中のNPCに似ている。
薄っすら笑みを浮かべ、楽しげにゆらゆらと体を動かして片足立ちでクルリと回り、光の効果を控え目に撒き散らしては飽く事もなく同じサイクルを繰り返す。
「幸せな子」
無邪気な仕草のカノジョへ向けて、ぽつりと落とされる声。
「命はない、心も。けれども愛され大切にされている」
「大好きだもの。人はなんだって愛し得るよ」
奇跡とも魔性とも賞賛される声の響きは、ただ語るだけでも人の心を掴みそうな力がある。
そう言う風に設計されたのだ。セイレーンは。
滅び行く世界の中、悲しみや恐怖に狂う人を抑止する為に作られた機構。
壊れつつある人を、恍惚の熱狂の中に葬り去って来た殺人機械。
翼のシンソウ・カノジョとは違う高い自立性を持ち、機械達の判断に因って製作された一つの完成の形であって、滅びの日よりも早くに恐慌に陥った人が多くの命を巻き込み、この世界を滅ぼさない様にと考えて作られた救済の装置でもある。
穏やかに、最後までの時を生き抜こうとする命を守る為の。
一つの信仰を集める、カリスマとして作り出された偶像。
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