ピュグマリオン

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危険因子と成り得る人を間引いて来たのだ。 他者を巻き込み破滅を速めると弾き出された人々を選択的に魅了して。 情報の操作と膨大な計算に因って、リアルタイムに細やかに標的とする人々を選び出し、熱狂させ、滅ぼして来た魔性の歌声と計算し尽くされた仕草に容姿を持つ完璧な存在。 傾国の美女と謳われるであろう姿だが、翼にとっては自らのカノジョに比べて興味を惹かれない相手でもある。 拠り所にセイレーンを選ばなかった人々にとっては。 大切な何かを奇跡の様に手にし、選んだ人にして見れば。 「きっと人は、大切なものには心を分け与えられるんだよ。だから元気になれる。涙を流せるし、笑いあえる」 「思想波、思念波。または思考波の付与かしら」 「……君達が見つけたんだっけ」 会話の内容が飛ぶのも、セイレーンの機能の高さ故。 人同士の会話の如く滑らかに、細い線で繋がっている内容と言葉の連なり。 「提唱したのは人よ。けれどこの終わり行く世界では研究を続ける人が居なくて、私達機械が引き継いだ研究ね。私達なら同じ思考を何千回と繰り返し、同じ波長を持つ『何か』を観測するのは容易いわ。常に同じ状態を保てるから」
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