ピュグマリオン

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否、そう言う風に出来上がってしまったのだろう。 シンギュラリティ以後、例え機械が思考の方向付けを導いたのだとしても。 滅びの予兆が観測されてから人の数は激減した。 最初は自棄になった者の犯罪傾向。 遺された時間が少ないのならば、好き勝手に生きようとした者の暴力と犯罪が横行し、巻き込まれて無辜(むこ)の人々も多く亡くなって行った。 無気力に陥った者や悲観からの自死の選択も増え、その為の手立ても機械は用意した。 それでも人は生物の一つであり、自然界に生きる命が終わりを迎える直前まで何時もと変わらぬ様に過ごすみたいに、やがて平穏さを取り戻した。 突然の自殺があっても、驚く人、嘆く人は少なく静かに事実を受け入れる。 今は穏やかな時代だ。 全てが老年期を過ごしているかの様に。 感謝が何よりも尊ばれる。 ささやかな喜びの積み重ねが。 人は遺された時間を知り、世界の崩壊を止める術を機械と共に模索もしたけれど、それももう無駄な努力と諦め切った。 滅びを受け入れているのだ。
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