ピュグマリオン

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シンソウ・カノジョに心は無くて、有るのは彼女を欲した者の願い、希望、理想。 プログラムに沿って笑って、泣いて怒って喜んで。でもカノジョは古さ故に音を出せない。 静かだ。 とても、とても。 陽が傾くと共に、ただでさえまばらな人の姿が更ににまばらになって行く世界。 暗闇を感知して点る街灯。 柔らかな明かりは子供を自然と守ろうとする親の慈愛にも感じる。 親のキーワードで翼が思い出すのは赤の他人。否、知り合いになるのか。 (でも、あの人は相性が最悪だった。シンソウ・カノジョを作り上げたあの人は) 老人ホームで働きながら、家族の居ない孤独の中に生きて一人寂しくこの世から去った人。 果たして本当に孤独だったのかと疑問に思いながら、翼は心を、想いを奏でる為に踊る。 一機とも一台とも呼んでよい、声持たぬカノジョ……ティアと共に。 しなやかに腕を体を空に泳がせ、全ての指先にまで神経を伝わせ想いを通わせ。 無音のままに、無言のままに、けれども表情を体いっぱいに表して、伝わって欲しい想いを乗せる。まだまだ伝わらない不安を感じる中、伝える意味すら朽ち果て行く世界で。 何一つ、そこには交わされる言葉も用意されていなくて。
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