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「……君は、人殺しの機械と言われる事に抵抗はないの」
不躾な質問が自分の口から零れ出たと気付き、眼を見開いた翼は慌てて謝罪と言い訳の文句を繋げた。
「ごめん、そんなつもりじゃないんだ」
なおも言葉を繋げ様とする唇に、セイレーンのほっそりとした指先が触れる。
もう一方の手指は、セイレーン自身の唇にあてがわれていた。
黙って、と伝える仕草。
顔には慈愛を湛える瞳と、悪戯っぽさをわずかに滲ませる口元。
「わかってる」
穏やかな声に、つい翼の顔にも微笑みが浮かぶ。
「うん。君達は、僕等より遥かに賢い」
「私が作られた目的を、貴女はきちんと理解している」
「うん」
一文字、一文字を区切り、セイレーンは丁寧にゆっくりと告げる。
「人は優しい」
言い聞かせる様に、抑えた音量で静かに。
「とてもよ。だからこの地上で最も繁栄した」
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