バウキス・ピレモン

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ウラヌス衛星とは、二〇四八年から二〇六〇年に掛けて、ウラヌス計画に沿って地球上全てを覆う様に計画され打ち上げられた一群の衛星に付けられた名称だ。 かつて一九九〇年から一九九八年に掛けて低軌道衛星を七十七基打ち上げ、世界規模での衛星通信を可能にしていたイリジウム計画に倣い付けられた名称。最も技術力の向上から、実際に打ち上げられた衛星数は六十六基となり、元素番号から付けられた名だけが残った計画ではあるが。 返答は銃声だった。 立て続けに空を裂く音が響き不意に止まる。 目にしていた翼にして見れば、まるで映画のワンシーンだった。 人間には出来ない身のこなしで、男の手を掴んだセイレーンが頭上へ向けて銃口を逸らしている。一発目の銃弾が放たれるよりも速く動けたのは、彼女が光の速さで思考し、また人の様にタイムラグのある思考から行動への移行を必要としないからだろう。コンマ以下何秒のズレは無いに等しく、判断と共に動ける機能があるのだから。 「人を、人を馬鹿にするなっ。俺達は飼い馴らされない。ウラヌスなんて、死を運ぶ者の名前だろう。貴様等機械は人を滅ぼすつもりだろうがっ」 「ウランは放射性物質の名前でもあるわね。でもウラヌスとは違うわ」 男の握る銃身が目の前で曲げられ破壊されて行く。
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