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我が子が、もう一人で充分に考えて行動できると判断し、自分の親としての役割を引き継げる機械に託したとも考えられないだろうか。
母は、自分の命の終わりを機械に託したけれど、子の命を繋ぐ選択を同じ様に機械に託したのだと。
自分と子供は違う存在であると。個の命を、自由を尊重し。
翼の投げ付ける言葉に男の表情は険しくなり、最早自分の腕が壊れる事も厭わずに暴れる。
彼を押さえるセイレーンは、下を向いてその表情を男には見せていない。
「答えて。君は恋人の気持ちを考えたの」
「煩いっ。あいつは俺と一緒に居るべきだったんだ。それを、貴様等機械が奪った」
「……私は望みを叶えただけ。沢山の人が願った望みを」
暴れても、暴れても、けして解き放つ事のできない機械の力。
曲げられ、ひしゃげた銃身は鉛の弾を撃ち出せば暴発して己の身を傷付けるか、使用も成らないただの鉄屑と化しているのか。
「俺は、椎を愛してたっ」
絶叫。
想いをぶちまけ、純粋な心を叫ぶ。
それは確かに正しかったのだろうけれど。
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