カストルとポルックス

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こんなにも心穏やかな時代。けれども天空に輝く巨大な雪の結晶は、美しくも死の象徴として在り続け、目視での観測でも判る程にゆっくりと成長を続け増えて行く。 実際は、光の速さで膨れ上がる空間の成長なのだと聞くけれど。 境界面に生じる、エネルギー差に因る光の放出が人々に変移した空間を見せている。 『真空崩壊』は真空の相転移と言うものらしい。 水がエネルギーを得て水蒸気と変わり、または喪失して氷と変わる様に物質の相が変わるのと同じ現象。 それが真空に起こったのだと。 真空と呼んではいても、実際の宇宙空間に広がる真空の世界にはまだ多くのエネルギーがあり物質がある状態なのだそうだ。そして真空崩壊を起こした空間は本当の真空と呼ぶべきものであり、よりエネルギーの低い状態であると。言わば水が氷に変化した様なものだと。 空気も無いし水だって無いのにと思う疑問は、なるべく噛み砕かれた説明に因って解説されたけれど、紫苑には今一つ理解は出来ていない。 私達の知る宇宙の真空は真に何も無いのではなく、そこを突き進んでくる光もあれば、星々から放出される各種の電磁波や星間物質があるのだとされた説明。 光も電磁波の一種類であり、また波でもあり粒子でもあるとされる量子論の説明もされたが、そこまで考えると余計に訳が分からない。
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