カストルとポルックス

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それはもしかしたら誕生と言う生の始まりであり、同時に死という終わりの始まりでもあったのかも知れない。 見上げる天に広がる、偽りの氷の結晶。 冷たい死をイメージさせる美しい幾何学模様。 人類の最後は美しいのだろうか。 終わりを迎えた時、ティオも同じ場所に逝けるのだろうか。 「Xデーってさ、早まるかも知れないって」 「ん、なあに」 見上げていた夜空から視線を共に出掛けて来たティオに向けた。 ぼうっとしていたから上手く聞き取れなかった。 「真空崩壊の話」 「難しいのは苦手だから、分かりやすく説明して」 笑いながら乞うと、ティオは柔らかな笑みを返してくれる。 アイボリーに近い、暖かな白色の仮面上を踊る光の信号が表情を形作る。 時に滑稽に。時に哀しげに。記号化された表情へ、豊かな声色と仕草でもって感情を乗せて。 紫苑はそこに隔たりを感じてしまう。 機械と人、無機物と有機物の差をどうしようもなく。
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