カストルとポルックス

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(ねぇ、君と私は同じ場所に逝けるのかな。頭の良い君は、私の考える彼方の世界の話なんて一笑に付す?) 説明をする事に意味はないと答えを弾き出したか、ティオは車の向こうから真白な雪を、キュッ、キュッと踏み締めながら回って来て紫苑の側に立つ。 「行こうか、ここからは歩きじゃないと」 「除雪車、入れないものね」 差し出された手を掴みながら、細い新雪の積もる道を眺める。 ……双子座流星群が見えるかも知れない。 たった一つ流れたニュースに導かれここまで来たのだ。 見てみたいと思ったのだ。 かつてなら、沢山の願いを叶えてくれる存在であっただろう星の流れを。 「お母さんの、お母さんの頃は暖冬で、雪のない冬を嫌がってもいたのに。今じゃこの量なんてね」 「地球温暖化の問題は解決したんじゃないんだけどね」 「でも、良くなってはいるのでしょう」 「うん。二〇六〇年頃を境にオゾン・ホールは観測されなくなり、上昇を続けていた年間平均気温も海水面も減少に転じたんだけどね」
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