カストルとポルックス

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「ギリシャ神話の登場人物の名前。二人は双子として生まれたけど、弟の方のポルックスは神様の血を引いていて永遠の命を持っていたんだって。でも人である兄が死ぬ運命を悲しんで、二人で永遠の命を分かつ事を望んで叶えられた姿があの星座。天に上げられて、共に在り続ける願いを叶えられた」 紫苑の為に詳細な説明を省いて手短な説明をして見せたティオは、細い肩から手を離すと今度は手を引いてゆっくりと歩き出す。 「……私達みたいだね」 「そうかな」 人以上に賢く、体と言う入れ物を換えて行く事で半永久的に存在できるティオに比べ、人である紫苑は再現性が難しいだろう。 ライフログを抽出し、故人となった人を仮想現実(VR)拡張現実(AR)の世界に映し出す技術は確立されているけれど。 所詮は作られた紛い物。 美しさを誇張された曖昧な想い出と、現実に残された記録とのズレに隔たりを強く感じて落胆する者も多いと聞く。 空は夜空と言うには明るい。まして真白な雪は光を良く反射し、余計に周りを明るく見せている。
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