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掌の冷たさは心の温かさの裏返し。今、紫苑が思うのは、その温かさは機械を人に寄り添うものと設計した過去の人達の温かさだと言う事。
もう、とうに滅んで行った人達の温かさが、ティオの中に息づいていると感じている。
「最後に質問しても良い」
「何を? ティオの方が頭が良いから何でも解っているでしょ」
茶化した瞬間、目の端を星が流れた気がした。
「今の、流れ星」
息を潜め、刹那の天体ショーを捕らえるべく夜空を凝視する。
見逃したくなかった。けれど、星よりも早く視界に入り込んでくる白い結晶。
静かに、静かに、それ等は天より舞い降りて来ていて。
祝福を表す天使の羽根の様に。でもそれは死を与えもする物で。
風の流れに何時の間にか空を覆い出した雲が、再び偽りの雪の結晶を隠して本物の雪を降らし始めていたのだった。
「ああ、残念。雪の夜になっちゃうか」
風に流されて来る雪雲は全天を覆い始めている。
思わず力が抜け崩れ落ちそうになる体をティオはすかさず抱き締め支えた。
「でも、良いかな。雪の夜ってのも」
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