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やがて最期の眠りに就いたもう数少ない人の肩を抱いて、ティオは話す必要も無い言葉を語り掛けた。
「ねえ、僕等は人よりも優れた計算に因って多くの事を知り得ていました。その為に嘘を確かに吐きました。もしかして分かっていたのですか? 僕等の嘘も。だから死に急ぎましたか」
降り積もる雪は、ティオの上にも息絶えた紫苑の上にも満遍なく降りて来ている。
それは、死よりも隔たりなく。
見上げる空には薄い輝きを纏う雲の群。
更に向こうには、人が様々な名称を付けた『真空崩壊』した宇宙が拡がっている。
人に似せて作られた手を差し伸ばし、無垢な雪の欠片を天から受け止めた。
穏やかな表情を見せる人の上へ、掌に降りて来た雪の一片を落とす。
これは僕の涙だと考えながら。
ティオに涙を流す機能は無いから。
雲間が切れる。
本物の雪と、雪の結晶にも似た空間の輝きがほとんどの空を占めていた。
人が走馬灯を見る様に、ティオは過去の紫苑を、彼女の言葉を記録のプールから掬い出して行く。
「終わりの世界って無彩色なのかな」
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