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一息ついて廣瀬緑は、長年愛用してきた藤蔓で編まれた椅子に腰掛けていた。
鼈甲の様に艶めく手すりに手を置き、壁に貼られた天体写真を眺めている。
かつて長生きする様にと願いを込めて贈られた、りゅうこつ座の写真。
星々を繋いだ細い白線の最果てに紅く輝く星が存在する。
カノープス。
別名、南極老人星。
隣の中国では、見る事が出来れば長寿を約束されるとされた寿ぎの星。南半球の星座だから、北半球側では緯度の低い地方でないと見る事は難しいもの。
しかし、赤い星が年老いた星であると知らなかった古の人は、その色に幸福を見たのだろうか。紅白の色合いは目出たいとされるから。
(そう言えば、ベデルギウスが超新星爆発を起こすって噂もあったわねえ)
カノープスから目を逸らし、また別の写真へと視線を移す。日本ではつづみ星とも呼ばれる星座オリオンへ。そこでは赤色巨星ベデルギウスの対角線の先に青白いリゲルが輝く。
同時におおいぬ座のシリウスの輝きも目に入り、オリオン座の足元に在るうさぎ座とリゲルのすぐ側から始まるエリダヌス座を形作る白線が途切れているのも視界に入る。
(太陽、シリウスに次いで、地球から観測する三番目に明るい恒星なのよねえ)
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