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もう一度、カノープスに視線を戻してから顔の向きを変えた。
彼女を親しく呼ぶ声がしたから。
「おばあちゃーん」
「はーい、なんですか」
幼い透き通る声へ、朗らかに答える。
幾つも重なる声は、歌う様に続いてさざめき笑う。
「お姉ちゃん帰ってきたから、ご飯用意してー」
「あら、遅かったわねえ」
呑気に答えながら今もベデルギウスは存在するのだろうか、それともとうに爆発を起こして宇宙空間に星間物質を撒き散らしたガス雲の塊となっているのだろうか、又は真空崩壊に飲み込まれているのだろうかとも考える。
光の速さで広がっているとされる真空崩壊。
宇宙空間そのものは光よりも速く膨張しているから、地球へと到達するにはまだ時間が掛かると弾き出された計算。
それでも終わりの時が来るのだとの報道に、人々は始めこそ懐疑的な態度を見せたものの、目の当たりに出来る夜空の異質さ故に直ぐに事実なのだと認識を改め狂乱した。
束の間のパニックの時は酷いものだった。
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