ピュグマリオン

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心に描いた深窓の令嬢。ここに居るのに、けして手に入れられない仮初めの命。 (……僕の永遠の恋人。シンソウ・カノジョ(ティア)) 爪先立ち、頼りなく揺れて見せて。空へ浮かぶ彼女と微笑み合い、天と地で背中合わせの鏡像を描く。嘘と本当、そのどちらでも有るシンソウ・カノジョと共に紡ぎ奏でる物語。 割り切れない想いを隠し。踊り手である少女は、青年の振りして理想のカノジョへ手を伸ばす。愛しげな眼差しと仕草で。 愛を知らない訳じゃない。でも深くは理解出来ないと思う心を抱いて。 愛情は独占欲を生み出し争いを生む。恋をし、愛し合う。その過程で生まれる独占欲。 それは尊くも醜いのか、憎たらしくも愛おしいのか。 生き物の本能や遺伝子に仕組まれている、どうしようもない生存競争の果ての産物。子孫を残す為には、大切なものは独占しなくてはならないから美化しているのではないか。 どう足掻いても、欲の根幹にあるものの一つが分からないでいる翼。目の前の幻想を深く愛していると思いながら心は呟く。幾度も繰り返した、自らの歪みなのではと思う疑問を。 (教えて下さい。異質である事は罪ですか? 当たり前って、本当に有るのですか) 四季折々の花の如く次々と芽吹き花開く恋の話。 飽く事なく繰り返され、いつかは愛と言う結実を結び次の世代を産み出す感情と衝動。 (クラスの人に、女の子達に上手く混ざれなかったのはその所為ですか)
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