ミダス王

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「降ったり止んだりです。今は吹雪く程ではないですが、結構降っています」 小さな駆動音を響かせて近寄って来たティキから差し出されたタオルを受け取り、髪の上で溶けて雫となった雪を拭き取る。 「ありがとう、ティキ」 「どういたしまして」 ティキから響く声は機械的に作られている。 見た目も上半身こそ完全な人型だが、二足歩行ではなくキャタピラでの移動が基本だ。身長も一メートルと小型に設計され、白を基調としオレンジやイエローの中間色寄りの暖色を配置されたボディ。瓜二つのティカにはブルーやグリーンの寒色を使われているのだが、イメージ的には何故かティキに男の子を、ティカに女の子を想定してしまう。 電子的な響きを持つ声色の僅かな違い、仕草の取り方から来る柔らかさの違いがそうさせるのだろうか。 そのティキにそっくりなティカが、配膳の施されたトレイを捧げてキッチン・スペースから出て来る。 既に良い匂いが立ち込め、少女の表情がいっそう和らいだ。 「あ、美味しそう」 「はい。おいしく召し上がれ」
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