ミダス王

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促す様に椅子を引いてくれたティキにもう一度「ありがとう」と告げ、ティカからトレイを受け取った緑がテーブルの上に置くと、今度は緑にも感謝の言葉を述べる。それから手を合わせて「頂きます」と呟くとスプーンを取り早速グラタンから食べ始めた。 熱いと呟き、直ぐに口を離して息を吹き掛ける姿には愛嬌がある。 そこに軽い足音を立て走り込んで来る子供達。上は十一歳から下は四歳までの幼き人達の中には少女と同じく雪を体に積もらせた者が居た。 「お星さま見えなかったぁ」 雪を振り払いながらの開口一番の台詞に困った様に微笑む緑。 子供等に続いて、赤燈がゆっくり室内に入って来た。 「まあまあ、ティナにプラネタリウムの用意を頼んだから今はそれで我慢な。もう少ししたら晴れ間も覗くかも知れんし」 流れ星を見る事が叶わなかった不満を口にする子をなだめる彼は、一人遅れての食事を取る少女に気付き、「お帰り」とだけ告げる。 「だから、今日は雪の予報だって言ったじゃないか」 「でも、見たかったんだもん」 一番年嵩の子へ唇を尖らせて見せながらも騒がしい子等の群れは、ティカから受け取ったタオルで湿りを拭き取り、楽しそうに着込んだ防寒具を渡している。
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