ミダス王

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この二つは、カシオペアのダブリューの形と並んで誰でも容易に探せるから、きっと知る人は多い。 オリオン座は全天の中でも最も明るいと知られるシリウスを目印に三つ並んだベルトの部分に当たる星を見付けてしまえば後は赤いベテルギウスと青白いリゲルの輝きを頼りにつづみの形を見い出せば良いし、北斗七星を含むおおぐま座は、天の北極に最も近い北極星(ポラリス)を持つこぐま座と共に年中沈まない星座と分かっている。その間には黄道が横たわり、カストルとポルックスの輝きが双子の頭部として光輝く。今日は、その星座の名を冠した流星群が極大だとニュースでは流れていた。 見たいと騒ぐ子を二人連れて食後に出て行った赤燈は、暗幕をブラインドの上に引き下ろして黙々とプラネタリウムの準備を始めている。その周りに集まり、我先にと手伝いを始める子供達。 全ての暗幕を下ろした頃を見計らった様に完全な人型のティナが、兎を擬人化したティムと一緒に小さな球形の映写機を持って室内に入って来た。 このホテルでは時折行われるプラネタリウムの観賞会。 ホテルのオーナーである夫婦が、天体観測を趣味としていたが故に購入されていた機器。 夜空を偽物の雪の結晶が覆い出してから、人は過去の映像で星座の姿を楽しむしかなくなっていたから。
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