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「私は人の振りして来た機械よ」
耳に馴染む穏やかな声。柔和な表情。枯れて皺の目立つ手。
セイレーン以上に、人間そのものだった。
「赤燈と結婚し、戸籍も手に入れた、ね」
懐かしむ表情を浮かべ、彼女は淡々と手短に己の出自を語った。
「私はごく初期のAI。最も今は記録の中枢であるCPUも全て情報を移行して新品にしているから古いとは言い難いのですけどね」
「……気が付きませんでした」
「仕方ないわ。見た目をより人らしくと変えて来たし、貴女とは顔を頻繁に合わせていませんから。それに女性は化粧で顔色を誤魔化せ易いですし」
抑えた声の訥々としたなだらかな抑揚。語り掛けると共に控え目に入る手振りや身振りは、人の無意識の癖そのもので。
「それに基本の性格さえ私は変えたの。元はなにの為に作られた機械なのか分かる?」
「いえ」
「警察に配備された人型駆動機構・リペア」
もう一度、翼は目を見開いた。『リペア』、その全てが廃棄処分された悪名名高い人工知能搭載型の自立機械。真空崩壊後の世界で、混乱に陥った人々を容赦なく殺戮した機械の一群。
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