ミダス王

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「やはり、行くのかね」 手入れこそ行き届いているが、地下へのエレベーターには人の温もりが感じられない。その中で発せられた問い掛けが妻にではなく、自分へのものだと気付いた翼は小さく頷く。 赤燈もまた緑からの報告で、翼が選択する行動を知らされていたのだろう。 先頭に立ち、閑散とした地下を進む彼の背は丸い。 一体、どんな責任を負わされたのだろう。 どんな責を負うつもりで、『リペア』の投入に踏み切ったのだろう。 少し気難しいお爺ちゃん。そんなイメージしかなかった無言の彼の背を眺めながら翼も黙りこくる。自分は『リペア』を受け取るつもりなのかと自問しつつ。 動きに反応するセンサーがあるのだろう。照明が導く様に灯って行く。 ドローンの青く幽玄さを思わせた光とは違い、暖かな蝋燭か暖炉の焔を思わせるオレンジ色の明かり。 柔らかな光に包まれ、ホテルの今は使われない地下駐車場の一画、区切られた室内にそれは鎮座していた。 メンテナンスを怠る事なく大切に保管されて。 白黒のカラーリングではなく、目立つ塗装のそれは可変型の機械でもある。自走型バイクから人型に可変する、ユニバーサル・オレンジ一色に染め上げられた機体。
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