オルペウスとエウリディケ

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仏教の仏や一神教で見られる彫像の古拙さ。古風で技巧的には拙くとも何処か素朴で捨て難い味わいのあるアルカイックさは最早持たず、ギリシャ神話の神々の如く人と同列の位置に降りて来て、恋さえしてくれるのではないかと錯覚させるほどの生き生きとした機械。 リョクは旧いイメージの人型機械(ヒューマノイド)になるだろう。 否、分かたれた記録のコピーで有り分身である廣瀬緑こそがヒューマノイドか。リアル・アニメーションと揶揄された姿には必要とされなかった人の面差し。それとも偏らせた思考のバイアスが、こう在るべきだと望む機械としての形に顕現させたのか。 まさしくロボットと呼ぶべき姿には、ヒューマノイドの代表格と言えるアンドロイド、ガイノイドの言葉は当て嵌め難い。空気抵抗を考慮し曲線が目立つデザインは武骨さを全面に押し出し、警告色だとも捉えられる鮮やかな色彩一つに身を固めるリョクには、人情よりも法に照らし合わせて行動する原理が組み込まれていたと聞いた。 かつての争乱期に、最高技術で作り出され個に特化した体を持ち得たAI。 人を守る為に、人を殺し得る術を持たされた機械に跨がり、翼はリョクの考え方を思う。 セイレーンが行ってきた、慈悲の精神に則って欲しがる人へ死を贈る方法とは違う。白黒をハッキリと着けた上で、慈悲も情けもなく命を刈り取った無慈悲な思考なのか。 透き通る覆いの中に、冷たい外気は入り込まない。 外は無彩色の世界。
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