オルペウスとエウリディケ

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見上げれば、広がり出した雲間から偽りの雪が見える。 天に在るのも色の無い世界。死を想起させる、白と黒の。 嘘も本当も、結果として真相を知り得なければ人は簡単に惑わされる。 大多数の意見に流され。 不確かさを多く内包する人に比べ、機械は常に正しい解を選択する様に出来ている。今では人へ寄り添うが為に、嘘を敢えて選択する事さえ正しい判断だと答えを求められるまでに発展した人工知能の優秀さ、人らしさ。 インターネットを主軸とし、世界規模で拡散され導入されたネットワーク上を、機械の意思は光の速さで動き回れるから。同時に膨大な情報を処理し、人の成長など瞬く間に追い抜き神の如き知性を手にして。 チューリング・テストの、人の主観で相手が人か機械かを判断する試験の結果など造作なく操作してしまえるほどに。 「そう言えば、ミダス王の父親はゴルディウスの結び目で有名だね。彼は、神託に因り貧しい農民から王に押し立てられた人だ」 リョクと廣瀬緑は繋がっている。 もしかしたら赤燈の父親からが運命を狂わされ、朴訥(ぼくとつ)と生きる願いは叶わず、普通より秀でているのだからと無責任に人類の命運を任されて争乱の只中へ投げ入れられた可能性を思う。
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