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目覚まし時計はきちんと責務を果たしていたというのに。
──まぁいっか。
遅刻したからって死ぬわけじゃない。死ぬような思いはするかも知れないが。
そう思い直し、とぼとぼと歩き出した。
──と。
四車線の幅広い車道を挟んだ反対側に同じ学校の女子生徒が突っ立っていた。この辺でブレザーの制服はうちの学校しかないからそれは間違いない。
ただ、違和感があった。
──何してんだ?
僕が全力疾走しなきゃならない時間帯に、その女子生徒は慌てず騒がず、ただただ突っ立っている。
僕は腕時計を見た。
リミットオーバー。僕の遅刻は確定した。
だがあの女子生徒はどうだろう?
先ほどと変わらず、顔をわずかに上を向け、じっと空を睨んでいる。
遠目だったが、なぜか顔だけははっきり見えた。
整った顔立ち。
色白の肌。
肩にかかった柔らかそうな髪。
正直、直球だった。
それはともかく。
──知らない顔だな。
顔に見覚えがない。という事は同級生ではない。そして遅刻を気にしているようにも見えない。
──じゃあ、彼女が転校生かな?
自慢にもならないが、僕は同学年の女子生徒の顔は全て記憶している。さすがに全校生徒全員は無理だが。
そんな彼女を見て、僕は妙案を閃いた。
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