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そんな私の贅沢な悩み。
それは曜日感覚がなくなってしまったことだ。
「曜日感覚だって?」
小説仲間のA氏に相談したところ、鼻で笑われた。
「いったいどういうことだよ。
君はカレンダーというものを知らないのかい?」
「そういうことを言ってるのではない。
ただね、私の生活は毎日が同じなんだ。
コーヒーを飲んで、小説を書いて、散歩して、たまに営業。
それを繰り返すだけ。」
「それの何が悪いんだい」
「月曜日と火曜日が同じ生活なのは構わない。
でもね、日曜日に特別感がないのは悲しいことなんだよ。
5年前までは休日が来るのを毎週楽しみにしていた。
今週の日曜日は何をしよう。
せっかくだから映画でも見ようか。
明日になるまでの時間をどれだけ有益に使えるだろうか。
そんな思案をしていた。
でも、今はそれが無い。
感情の起伏がなくなって、平な時間をただ貪っているだけなんだ。」
A氏は大きなため息をついて、肩をすくめた。
「そんなちっぽけなことで悩むなんて、全く贅沢な奴だなぁ。」
「おっしゃる通りだ。」
「でもまあ、そういうことなら良いアイデアがある」
「へえ、教えてくれないか」
するとA氏は人差指を窓の方にクイッと向けた。
「それはね、朝のコーヒーを飲むときに、通りのほうを眺めるのさ。」
「つまりどういうことだよ?」
「平日の朝の風物詩。それは通勤に追われるサラリーマンさ。
どんなに暑かろうが真っ黒なスーツを着て走るあいつらの姿を見てると、今日は平日なんだなぁ、って印象付けられるだろう?」
「そんな簡単なことなのかい」
「まあ、物は試しにやってみるといい」
そう言われて、私はしぶしぶ朝の日課に一つの変化を付け加えた。
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