当たり前に、溺愛

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凛様は大げさにため息をついて、私が大事に抱えている中華まんが入った紙袋をつんつんと指でつついた。 「この袋を持って来た男と何だか仲良さげだったけど」 ……あ、それで、私を追いかけてきたとか? 私は心がほっこりする。 「仕事で一緒になる事が多いだけです」 私は興味なさげにそう言うと、凛様の左耳から私のイヤホンを引き抜いた。 佐々木さんの話を凛様とする気にはなれない。 だって、さっきの蛇の様な目つきを見れは機嫌を悪くしているのは確かだし、そういう面に関してはきっと星矢君より子供のはずだから。 しばらく凛様は黙っていた。 混んできた電車の中では話す気にはなれないらしく、口を尖らせている。 私も半分休息しながら音楽を聴いていると、スマホに凛様からメッセージが入る。 「で、中華まんの彼は、同じ職場の人間?」 中華まんの彼って… 私は音楽を止めてイヤホンを外し、凛様の方を見る。 「言わなきゃダメですか…?」 凛様って多分容赦ないところがある。 私が軽々しく佐々木さんの事を喋ってますます凛様の機嫌を悪くしたら、佐々木さんのクビが飛ぶかもなんて恐ろしい事が頭の隅をよぎる。
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