当たり前に、溺愛

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私は今、電車の中がぎゅうぎゅう詰めで良かったと心から思った。 こんな風に私の肩を抱き寄せる凛様を、やめて下さいって言いたくない自分がいる。 こんなに混んでたら、皆、人の事に構っていられないはずで、だから、私達がちょっといちゃいちゃしていても、きっと誰も気付かない。 それにしても、夕方の電車は本当に混んでいる。 最寄りの駅に着いた時は、私も凛様もクタクタになっていた。 「麻里、ちょっと休憩しよう」 凛様は家までの道を歩きながら、私にそう提案する。 「無理です。今でもギリギリなのに。 凛様は休憩してきてください。 私は全然構わないので」 凛様はもう私の生真面目な性格を把握している。 すると、私の後ろを歩いていた凛様がいつの間にか隣に並んだ。 「あの中華まんはいつ食べる? 一人で四個は無理だろ?」 「食べたいんですか?」 私は歩く速度を落とさずにそう聞いた。 「食べたいよ~ そんな麻里の気を引こうって見え見えの中華まん、俺が全部食ってやる」 「凛様、そんな下品な言葉を使っちゃダメです」 私はつい星矢君に言うように凛様をたしなめる。 凛様は駄々っ子のように私から中華まんが入っている紙袋を取り上げた。
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