医療者という社畜

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「はい、大丈夫です。だいたい出来ているので、細かいところ直せば出せます」  ちなみに、データはなんとかまとめたものの、抄録は全く書けていないので、完全なるはったりである。しかも、締め切りなんて来週だと思っていた。 「じゃあ、明日朝いちで一回見せて」 「わかりました」  キリッとした顔で返事はしたものの、明日の朝いちに見せなければいけないという焦燥感と、アニメを生で見れない失望感でいっぱいである。 「あぁ、東野。また君に会えないのか」  ピンク色のツインテールと透き通るような美しい声を思い出すと胸が苦しくなる。 「早く君に会いたいよ」  白衣のポケットから手帳を取り出し、最初のページを開く。雑誌からスクラップした東野が俺を見つめる。 『抄録頑張ってね』  彼女の笑顔はそう言っている気がした。  しかし、アニメはちゃんと録画しているわけで、帰ってからビール片手に見ればよい。もちろん、抄録作成に手こずって日が変わらなければの話だけれども。  そんなこんなで医療は日々進歩し続けている。現場の犠牲のおかげで。     
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