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接客らしいことが出来ないか。涼雅は冷蔵庫の中を覗く。
一見埋まっているように見えるが、最近買い出しに行っていないので隙間が多い。埋めているのは酒などの飲料がほとんどだった。
ビールをどかし、何かないかと奥を弄って見る。
「何してんだよ」
冷蔵庫の頭を突っ込んでいると、背後から覚めた声をかけられた。
「あれ。テレビ見てたんじゃねーの?」
「そん中俺のもんも入ってるから。何かされんじゃねぇかと思って」
ここにある央雅の私物はミネラルウォーターぐらいだ。
それを出すとはさすがに思っていないだろう。
大方、見ず知らずの人物と同じ空間にいるのが耐えられなかっただけだ。
「麦茶なら出してもいいと思う?」
小声で尋ねる。
返答は声量を気にしないいつものものだった。
「茶飲みに来たんじゃねぇんだから、何でもいいだろ。ンの前に何に注ぐんだよ」
「あ」
生活に必要なものは2人分しかない。
「紙コップ、なかったっけ?」
「今までに買う必要性あったかよ」
「ないね」
うぉぉ……、と涼雅は冷蔵庫の前で頭を抱えた。
「今から買ってくるべき?」
「茶飲みに来たんじゃねぇつってんだろ。いいからさっさと用件吐かせろ」
「あ」
それは一理ある。
彼女が急くようにドアを叩いてことを思い出す。
涼雅が立ち上がると、央雅は道を開けるために壁際に寄った。その前を通り過ぎ、涼雅は少女の正面に正座した。
央雅はキッチンから一歩だけ出て、壁に体重を預けて腕を組む。
「それで、俺らに何か用かな?」
持ち前の人懐っこい笑みを見せながら少女に尋ねる。
少女は深刻そうに俯いた。更に力強くバックを抱きしめる。
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