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「私が、無理言ったの。どうしてもって。それでも無理だってあの人は言ってた。でも、どうしても知りたかったから、たくさんお金を払ったの」 「幾ら」と遠いところから声をかけられたのに、まるで耳元で脅されているような気分だった。 「央雅」と涼雅は振り返り咎めるように名前だけ呼ぶ。 「……600万」 「ろっ!?」 怒りで目を釣り上げていた涼雅だったが、その金額で目を丸くした。央雅も少しだけ目を見張る。 なんでそんな金額をただの少女が持っているのかも疑問だったが、そこは目を瞑っておく。 「そんな金額払ってまで……なんで俺らに?」 「……信用できる便利屋さんだって聞いたから。それに」 「……それに?」 「運び屋さんなら、『荷物』の扱いとか、処分とか、詳しいと思って……」 「……」 2人は顔を見合わせた。 正規の方法でされた以来ではない。異例中の異例だ。 安全とは言い難い界隈にもルールはある。持ち込まれる全ての例外を特例の一言で受け入れてしまえるほど、自分たちは秩序という名の囲いを過信してはいない。 それでも。 もはや自分たちのようなならず者に頼るしか術のない少女にせめてもの報いを。 涼雅は相手の目を射抜いたまま大きく首を縦に振る。 『金銭』という万人に平等の信頼の証で自分たちを選んでくれた相手に相応の礼儀を。 央雅は目を逸らさずに深く瞬きをした。 「そのご依頼、わたくしたちが引き受けます」 涼雅は胸元に片手を添えながら少女の震える双眸を真剣に見つめた。
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