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◇
荷物を預かって1日目。
オフだったところの急遽舞い込んだ仕事だが、オフの方が珍しいゆえに仕事が入った方がスムーズにその日の予定が立った。
そのことまで含め、初日は何の問題もなかった。
2日目。
事が動いた。
この住処は誰にも知られていない。情報を売ることで生計を立てている情報屋もそう簡単には口を割らない。理由は単純。その報復をされたらたまったもんじゃないからだ。
それもあり、2人は危険と並走しているにもかかわらず私生活にある程度の安寧を築いている。
築いている、はずだった。
2日目も仕事らしい仕事はなかった。預かっていた荷物以外することはなく、前日と同じように暇を堪能していた。
急転のきっかけは、窓ガラスの割れる音だった。
ソファーで並んでテレビを点けながらそれぞれのことをしていた2人は、反射的に立ち上がった。
破壊音がした方に注意を注ぎながらも、央雅は涼雅を指差す。
音がしたのはお前の部屋だな?
涼雅は短く頷く。
ぎしり、と床が軋む音がする。
その音は一回だけだ。
飛び込んできたのは、つまり1人のみ。
敵陣に単独侵入とは、見上げた根性だ。
央雅は軽く首を回しながらニヤリと片方の口角を吊り上げる。
ギィ、という蝶番の音。
ぎしり、とまた床が軋む音。
同居人の部屋に立ち入る回数は少ないが、それでもどこの床が軋んでいるのかは大体把握している。毎日同居人が歩くたびに軋ませているからだ。
それは室内に一箇所と、部屋を出てすぐの廊下で二箇所。
涼雅の部屋、央雅の部屋、そしてリビング。その全てをつなぐ廊下は直線だ。
ドアの開く音がして、その直後。
体の半分も出てきていないうちに、央雅はソファーの背もたれを飛び越え、飛びかかるようにして殴りかかる。
涼雅は相方の動向を気にかけながらも、ポールハンガーの足元に置いていたカバンを素早くソファーの下に滑り込ませる。
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