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央雅の一撃をまともに食らった侵入者が何かを呟いた。 侵入者が床に倒れこむ音や打撃音で聞き取りずらかったが、自分たちの通称名だった気がした。 「誰だテメェ」 侵入者を床に伏せ、左の方を極めたまま央雅が問う。 侵入者は男だった。すぐに倒してしまったため背丈は分からないが、細くもなければ筋骨隆々でもない。 そいつは唇を強く噛んだまま、何も言おうとしない。 央雅はさらに肩を曲がらない方向へと押しやる。 その隙間からくぐもったような声が空気とともに吐き出される。苦痛の声だけでそれ以外は何も出てこない。 央雅はさらに肩を押しやりながら、ついでに掴んでいた二の腕に爪を立てるようにして鷲掴む。 どうやらこの状態から抜け出せるほどの技量はないらしい。 雇われた身なのか。それとも注意を怠りすぎた空き巣か。 もし前者なら白状しないだけまだ上等か。 それに、先程殴りかかった時に自分の顔を見てこの世の終わりのような顔をしていた。ここが誰の住処なのか、知らずに乗り込んできたのだろう。 「どうする、シめるか?」 鼻で笑いながら、声を少し弾ませながら央雅は後方 に確認を取る。 「うーん」と悩むような声が答えたが、それはさほど考え込んではいない。 「侵入するにも決意が必要だったろうし、それを汲んであげるためにも根掘り葉掘り事情を聞いてあげてもいいんだけど、ケーサツ沙汰は俺らも得しないしなぁ」 涼雅はいつも以上に明るい声ですらすらと言葉を並べる。 この男が動けなくなって、少なくとも30秒は経過した。それでも援軍が来ないどころか、ほかに気配を感じないあたり、単独と見て間違いない。 涼雅は侵入者の顔側に回り込む。 そしてその位置に涼雅がしゃがみこむと、央雅は左側を向いていた男の髪を引っ張り、涼雅の方を向かせた。
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