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「まぁ、ぶっちゃけお前みたいなのは街で絡んでくる雑魚と大差ねーけど、ここ知られたってことが厄介なんだわ」
男の正面に座り、その顔に自身の影を落とす。
相手の口元が怯えるように歪む。
「眼中にねーから帰してあげるけど、他の誰かがこの場所を知ってるなんてことがあったら……どうなるか分かるな?」
涼雅の声が低くなると、男の喉仏が上下した。髪を引っ張られているにもかかわらず、男は何度も頷く。
その恥辱な姿を涼雅はケータイの画面に収めてシャッターを切った。
その音が静かに響くと、央雅は掴んでいた髪から手を離し、重心をあげる。
少しでも逃げれる隙間ができると、男は四足歩行の動物のようにバタバタと距離を取り、そのまま破ってきた窓の外に飛び出した。
鋭い破片の先に赤いがついていた。
「ったく、どーしてくれんのよ。今日雨降ったら俺雨風にさらされながら寝るしかなくない?」といつもの軽口を叩く調子で大きめな窓のかけらを選んで拾う。
「俺の部屋には絶対来んなよ」
「行きたくても施錠されてるだろうが」
破壊された窓も十分問題だが、それより先に片付けるべきものがある。
あの男がこの場所を知り得た理由だ。
情報屋に聞いた可能性も十分あるが、あんな下っ端のような男には例の情報屋にたどり着くことすら不可能だろう。
家主を知らずに場所を特定したと言うことは、自分たちが目当てではない。
今この家で自分たちに関係するもの以外といえば、預かった『荷物』しかない。
涼雅の部屋から離れながら央雅は「バッグは?」と尋ねる。
「ソファーの下」
言う終わるや否や、央雅はカバンを引きずり出し、問答無用でファスナーを開けた。
「あ?」
「うわっ」
中に入っていたのは、犬や猫や兎などの姿をしたぬいぐるみだった。
それがみっちりとしまいこまれている。
ファスナーを開けた途端、一番上に置かれていたぬいぐるみが飛び出るようにバックから溢れた落ちた。
「クスリか?」
涼雅は落ちたぬいぐるみを手に取り、指で潰すようにして中を確認する。
「いや、何もなさそうだ」
「……」
央雅も目に付いた人形を手に取り隅々まで指圧する。
違和感はない。硬い箇所は目玉の部分だけだ。
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