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怪しい物は入ってなさそうだ。逆にそれが怪しい。 ただのぬいぐるみを詰めたバックを預ける理由がない。こんなおもちゃ箱のようなものを狙う輩がいるとは思えない。 2人はバックを挟み、片っ端からぬいぐるみを調べていく。 中にわた以外のものは入っていないか。どこかに何かを隠せそうなものはないか。 この場所を特定できそうなものは隠されていないか。 「……」 涼雅は意味もなく目についた外側のファスナーを開けた。 ぬいぐるみに押しつぶされて機能できなさそうだが、一応ポケットだ。 試しにその中に手を突っ込んでみると、奥深くで指先を何かが掠めた。それを手繰り寄せるように上まで運んで陽の下で確認する。 特徴のない黒くて四角い何か。 大きさは小指の第一関節ぐらいだ。 機械類に明るくはないが、普段目にしないものだからこそ断言できる。 「GPSか」 この発信機の信号を辿り、あの男はこの場所に運悪く足を踏み込んだ。 「あの女の仕業か?」 「いや、それは流石にないだろ。そんなに不安なら人に預けるはずがない」 「じゃあ、あの女を使ったどっかのクソ野郎が仕込んだってことか」 ハッ、と央雅は鼻で嘲笑う。 「信用できねェ相手使うかよ、バカじゃねェか」 「まぁまぁ。とりあえず……あの子は『クロ』だ」 温厚な涼雅の目の奥が鈍く光る。 これがただ怪しむだけならどんなに楽な話だったか。 央雅は鼻でため息のように長い息を吐きながらぬいぐるみの選別を進める。 調べては外に放り、それを繰り返していくうちにバックの側面が、底が、見え始める。 終わりが見え始めた頃に手に取ったぬいぐるみにようやくあたりの感触があった。リボンをつけた熊のぬいぐるみだった。 それは石のような硬い感触だが、石なんかよりもずっと平面だった。 正体を知るためにぬいぐるみを引き裂こうとしたが、背中部分にファスナーがあった。 それを下げる。こちらの様子に気づいた涼雅は自分の作業をやめ、問題のぬいぐるみを凝視していた。
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