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ファスナーを開けて、出て来たのは鍵だった。
どこにでもありそうな鍵に、数字の書かれた楕円形のプラスティック板がつけられている。
「ロッカーの鍵、か」
涼雅は相手の手の中にある鍵に顔を近づける。央雅も手にしたものを相手の方に差し出しながら少し顔を引く。
「というか……なぁ、発信機見つけたんならもう漁る必要なかったんじゃねェの?」
「……ほんとだ」
「……」
「……」
涼雅は央雅の手から似合わない熊のぬいぐるみと鍵をすっと抜き取り、元あったように鍵を背中にしまい、静かにチャックを閉め、そのまま何事もなかったかのようにバックの中に戻した。
続けて央雅が手近なところにあったぬいぐるみをバックにしまう。
次は涼雅が。その次はまた央雅が。
そうやって全部を元に戻して。なんならポールハンガーの下にまで戻して。
2人は互いに顔を見合わせて一つ頷いた。
とりあえず今はまだ見なかったことにしよう。
あぁ、そうだな。
探りすぎた感は否めないが、発信機を取り除くことは許されるだろう。
涼雅は手のひらの小さな箱を見つめる。
さて。これは壊しておくべきか。どこかに放り投げるべきか。
壊して、それを先方に知られてしまうと少し厄介なことになるかもしれない。
涼雅は少し考えた後、床の上に雑誌を置き、工具箱から持ってきた金槌でぶっ叩いた。
原型がなくなったそれを見て、涼雅は満足げに「よし」と呟く。
「あーあ、やりやがった」
ため息混じりに央雅はそう呟いたものの、そうするだろうなとは雑誌を敷く前から勘づいていた。
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