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なんとなく目を覚ました。
うっすらと目を開くと天井がよく見えた。もう外が明るい。
ブラインドから入り込む明るい日差しから逃れるために壁際へと寝返りを打ち、瞼を閉じる。明るいのは煩わしいが眠気を誘う暖かい日差しが程よく心地よく、徐々に意識が薄くなる。
それでもすぐに寝付くことはできず、低迷している意識は部屋の外から聞こえる音をかすかに拾ってくる。音だけで何をしているのかは流石に分からないが、毎日聴いている音なのでなんとなく察しはつく。
壁を挟んでいるためノイズのように聞こえてくるテレビの音。恐らくは水を流しているであろう音。歩くと少しだけ軋む床。それと発動的な足音。
央雅は閉じていた目を最低限開けて、枕の隣に置いていたケータイに光を灯す。昨晩暗闇の中では眩しかったので最低限まで光を落とした画面は陽のあたる今ではほとんど見えない。操作する気が起きず、なんとか目を凝らして時刻を確認する。
10時24分。
起きるように強いる人物も予定もないが、央雅は横たえていた重い体を渋々起こした。
まだ目は完全に開きそうにない。
ぼーっとする頭。やはりまだ重たい瞼。上体を起こしただけのこの体勢でもすぐに寝れそうだった。
見慣れた光景を映すだけの目。働きそうにない頭は先程から聞こえてくる生活音がなんの音なのか細かく分類する気はまだなさそうだ。
下肢にブランケットをかけたまま、一つ大きくあくびをする。
涙を拭わずに、そのまま動けずにいると、鼻孔を微かにくすぐられた。
美味そうな匂いがする。けれど、どうも朝は活動的になれない。腹の虫も同じらしく鳴く素振りすら見せない。
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