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寝癖のついた頭を適当に手で掻き、体の上のブランケットを退ける。
壁越しの音も香りも、別に起きるように催促しているわけではない。それを作り出した人物も特別それを望んでいるわけではない。
それでも央雅は渋々立ち上がった。
馴染んだ室内をよろめきながら扉まで向かい、壁を伝いながら廊下に出る。
出て5歩も歩かずにリビングに繋がる。
「相変わらず眠そうなアホヅラしてるなぁ」
先にリビングに出てきていた涼雅が楽しそうに笑いながらそう言ったが、今は応えるだけの気力がない。
匂いの元は並べられた朝食だ。
ダイニングがないのでそれらはキッチンと直結しているリビングに並べられている。
壁際に置かれた小さめの薄型テレビにはアナウンサーがなにかのニュースを読み上げている。テレビのサイズは覚えていない。
それに向き合うように1人がけソファーが2人分置かれている。その間に置かれたローテーブルの上に皿が二つ並べられていた。
央雅は未だに半分ほどしか開かない目のまま右側のソファーにどさりと腰を落とす。
並べられていたのはパスタだった。
トマトソースでパスタが赤くなっているわけではない。どちらかといえばパスタ本来の色に近い。
央雅は片目を擦ってから更に手を伸ばす。その縁にはフォークが添えられていた。
皿を顔の位置まで持ち上げる。カルボナーラのようだ。
フォークをパスタに絡めようとすると名前を呼ばれたので、首だけそちらに向ける。
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