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央雅は顔をしかめながらも文句を言わずにテレビの方に向き直った。
それなりに付き合いがある涼雅は、それが了承を意味することを分かっている。
「他にも買い出しとかしときたいし。あ、昼飯どうする?」
「サボらず作れ」
央雅は咀嚼しながら答える。
「そりゃ作りますとも。ちげーよ、何食いたいって話」
何、と呟き、央雅は口で噛む運動をしたまま少し考える。
今麺類を食べているし、どうせならそれは避けたい。となると、他は米かパンか。そうは言っても別に麺類が嫌いなわけではないし、麺には他にも種類がある。というか、そういった細かいことを気にする性分ではないので別に麺でも構わない。なんなら三日ぐらい麺が続いても別に。
「なんでもいいわ」
興味なさそうに答えると、涼雅は「えー」と不満を口にした。
「なんでもいいとか言って好き嫌いするじゃんお前」
そう言いながら涼雅は必要以上にパスタの絡んだフォークをくるくると回転させる。
央雅はテレビを見ながらズルズルとパスタを啜る。
なんでもいいというのは何を出されても食べるという意味ではなく、食う食わないはこっちで決めるから好きなものを作ってろという意味なのだが、まぁ説明したところで分かってもらえるわけもない。
ごくりと嚥下する。
「外食いにいく?」
「何食う気だよ」
「んー。久しぶりにあのラーメンでもいいし、いつもの定食屋でもいいし。なんなら開拓してもいいし」
「決まってねぇのかよ」
「決めるのも楽しみの一つでしょ。それをめんどくさがっちゃうとか、心が荒んでんぞー」
「言ってろ」
央雅は空になった皿をテーブルの上に置いた。テーブルと皿、皿とフォークがそれぞれ音を立てる。
代わりにコップを手に取り、中に残っていた麦茶を一気に飲み干し、テーブルに戻す。その振動でまたフォークがカチャリと音を立てた。
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