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◇ この場所は家と呼ぶにはお粗末だ。 寝ぐら、住処。そんな言葉がよく似合う。 生活感が皆無なわけではない。 むしろ凝り性な人間も住んでいるため、物は多い方だ。それには巣食っている人物の好みや趣味趣向などが前面に出ている。それぞれ2人分あることもあり、住んでいる人数も丸わかりだ。 だがそれらはあくまでも衣食住に関わるものとそれの合間を潰すものだ。 他人を出迎えるようには出来ていない。それ用の空間がまずない。 「あー……座るとこすらないね」 涼雅は気まずそうに頬を掻きながらリビングを見渡した。 リビングにはソファーが二つしかない。物が多いとはいえ、一応収まる場所には収まっている。足の踏み場がないなんてことはないし、なんなら床に寝転がることもできるが、さすがにそこへ座らせるわけにはいかない。 「嫌じゃなかったらあそこに座ってもいいけど」 涼雅は肩身を狭くした少女の肩を優しく叩き、自分の指定席を指差す。その隣の椅子は既に持ち主が陣取っていた。 背後の出来事に見向きもせず、つまらなそうにテレビの画面を眺めている。 肘掛に肘をつき、頬杖に体重を乗せ、足を組む。 元々近付きがたい風貌だがそれが助長されている。 少女は嫌とは言わなかったがソファーに近づこうとはしなかった。 「……別に、床で」 「……座布団すらないけど。あ、タオルでも敷いとく?」 「いい」 少女は片膝を床につけてから、もう片方の足を折り曲げる。そしてその上に体重を落とす。スペースはまだまだあるのに、少女はやはりカバンを抱きしめるように抱えたままだった。
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