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ふと気がつくと、日が暮れていた。僕が後ろを振り返ると、君はハアハアと息を切らしていた。
「ちょっと、困るんだけど。私、面倒なこと嫌いだからとっとと済ませてよ」と、君は気だるそうに僕に言った。
「ごめん、気が変わった。もう、君の陰毛はいい。ただ、君は君を大切にして欲しい。陰毛の安売りはもうしないで欲しいんだ。」
「はぁ?何?チョー、うざいんだけど。」
「僕、知ってるんだ。実は君が、余命1年ってこと」
「は?」
君の顔が、一瞬曇りかけた。
「実は僕、人間の姿をした死神なんだ。人間として生活してるけど、本当の仕事は死期が近づいてきた人を迎えに行くことなんだ。
君も、あと一年。だから、君のことを監視し続けていたんだ。しかし、毎日眺めているうちに、どうやら感情移入しちゃって。君のこと、好きっていうか…
いや、死神は好きとかそういう感情を人間に持つことは禁じられているから。だから、陰毛が欲しいってことにしてるんだ。僕の気持ち、わかってくれたかな?」
君のこと、本当は好きなんだ。けど、好きって気持ちを人間に伝えるのは死神界で禁じられている。だから、これが精一杯の愛情表現なんだ。
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