第1章

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  九月の半ばに眠い目を擦っていた。  一瞬、意識を手放していた。暗闇の中へと視界が没入していた。要するに立って寝ていたわけである。  もういいかな?  立ちんぼなのは、南側にレジの前に並んでいる人たちのせいだ。  十人はいるだろうか?  お手頃価格の冷凍うどんを片手に、いつまでかかるかと疑問に思っていると、やっと、一人がレジを済まして、列が進んだ。 「いらっしゃいませー」  コンビニの店員は、次の客の相手よりも、新しく店に入った客に意識を向けている。お客でぎゅうぎゅうなのに、非常にのんびりだったので、ぼくは欠伸をした。  昨日の徹夜も手伝って、意識はもう家の中の布団の中だ。  微睡みから、目を開けると、そこには自動販売機があった。あれ? 確かにコンビニで夕食の冷凍うどんを買ったはず。しつこいくらいに濃い出汁のうどんが好きだった。  はて? 目の前にはコンビニのレジの前に立ち並んでいた女性の後ろ姿ではなく。  自動販売機の列がある。  片手には冷凍うどんの冷たい感触があって、知らないうちに買っていたのだろうか?とにもかくにも、自動販売機から清涼飲料水を買って、家路につこうとした。    ここはどこだろう?   どうしてもわからない。  自動販売機の列が遥か彼方まで伸びている。石岡にいるぼくは、つい最近に引っ越してきたので、初めての場所に少し戸惑っていた。  太陽が西へと傾いているので、自動販売機の列はちょうど南の方まで伸びている。  辺りには、日陰をどんどんと産みだしている建造物が建ち並び。風も通らないくらい に密集していた。  仕方なく。自動販売機の列を追いかける。ぼくの家も南の方だ。  密集した建造物が押し寄せて来た。  
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