プロローグ

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 吉川夏実の見た目は、猫目で黒目がち。髪は肩に触れるほどの長さの黒髪で直毛。全体的な雰囲気としては、学校の中では、普通から少し可愛いぐらいの容姿。  性格も大人しく控えめに見えるように振る舞っているので、その態度を続けることさえ出来れば、彼女にとって恋愛するのはそう難しいことではないだろう。  しかし、彼女はやたらと時間がかかる恋愛に興じるよりも、良い成績をとることに集中したかった。  勿論、恋愛話を聞くだけで、実際の恋愛事情を理解できると彼女は思ってはいない。従って、とりあえず彼女を作りたかっただけだろう同級生に告白された時に、一度お試しで付き合ってみたこともあった。しかし、彼氏にデートやら電話やらをされることによって消費する時間は彼女の負けず嫌いの性格を養うわけもない。恋愛にかける時間が価値あるものと思えなかった彼女は、結局付き合って一週間で別れを切り出した。  彼女の恋愛経験はそれっきりだ。しかし、彼女は学校で恋愛話を聞く度に負けず嫌いの性格が疼くのを感じていた。  夢みたいな話。時間も負担もかけることなく、都合の良いインスタントな恋愛で彼氏が出来ないものか。  しかし、勉強に時間をつぎ込みたい人間に、好き好んで合わせてくれる人間はいないだろうと彼女自身は半ば諦めていた。そして、自室で学習を続けていた彼女だったが、休憩も挟まずに学習し続けたことによるものか、突如強い眠気と頭痛に襲われた。  彼女は眠気覚ましのツボとやらを押してみるものの、眠気は収まらず、頭痛も止まらない。いつまで経っても収まらない眠気と頭痛で、学習に集中出来ないと、諦めた彼女は少しだけ睡眠を取ることにした。  スマホを手にとって時間を確認する。16時24分。  晩御飯まではまだ時間があるだろうと、想定した彼女はスマホのアラームを17時に鳴るようにセットする。  そして、机の上の参考書とノートを端に寄せると、眠りすぎないように椅子に座ったまま、机の上に腕で枕を作った彼女は眠気に従って重い瞼を下ろした。  そして彼女の意識は睡魔とともに、とても奇妙な夢の中に落ちていく。
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