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社畜、ファーストフード店で友人と再会す
工藤は、迷っていた。
以前いた会社の話をするべきかどうか。どうせひどいことしか言えない。
誰かが怒鳴った、誰かが怒ったという暗い話になることが目に見えているからだ。
台風が来るという日の夕方から、わざわざそんな話をして何の楽しみがあろう?それを話すことで自分が救われるのか?誰かの励みになるのか?
騒がしい日曜のファーストフード店の片隅で、久々に会う友人を前にし、工藤の葛藤は続く。
「おい、工藤。てめえつまらなさそうな顔してるじゃねえか。おい、もうちょっと楽しそうな顔しろよ。ブラック企業から逃れられてせいせいしたって話してただろうが」
工藤に話しかけるのは、友人の佐藤だ。この佐藤は、あまり賢くはないが悪い人間ではない。
「佐藤、お前に話すようなことはない。せいぜい、俺が店員として入っていた店はつぶれて今は薬局になっているということぐらいだ、話せるのは」
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