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そして、『研究以外の事』に現を抜かそうとしている他のメンバーと違い、ガリーナは『それ』に興味が無い。出し抜く、と言えば聞こえは悪いが、誰よりも調査研究に関して成果を上げる機会なのだ。実際、この数年間で彼女の研究調査報告の質と、そこから影響された土壌研究や除染技術の開発は目に見えて進んでいる。
……それでも、地上の居住環境可能地域の減少に、決定的な歯止めを掛けられないままだ、と言えば、どれだけ地上の生活が過酷なものであるか、伝わるだろうか。
半世紀前の人間に、今の地球の大気と土壌について熱弁したところで、真に受け止めて理解してくれる者は居ないだろう。それ程に、環境は激変してしまったのである。
マニピュレータの操作グローブで、白い砂の下に広がるヘドロの調査をしていると、ストロボライトの向こうで不自然な形状の物が照らされた。ガリーナはグローブから手を引き抜き、操舵レバーでその方向に向かう。シーオの突然の動きに、ヨルクが気付いて声を掛けてきた。
「どうかしたか」
「三十メートル先に、何か見えた」
近付くと、それは骨である事が分かった。まだ白骨化してから、そう長い時間が経っていないと思われた。腐肉を食らう動物もバクテリアも存在出来ない海底では、綺麗に骨だけが白く残るという事はないものの、沈み切る前に何度も魚に襲われたのか、元はどんな形状をしていたのか、という判別は中々付けられなかった。
が、判別出来ないのは詳細な種類であり、その骨が何という動物の物かは容易に知れた。
「クジラの骨だな」
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