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ガリーナ・島ヶ原の乗った潜水球の、深度を指し示す計器の針は、既に百五十メートルよりも深い事を示していた。この海域の海底に到着するまでにはまだ時間が掛かるので、ガリーナはする事も無く、ぼんやりと暗闇の広がる海中を見つめていた。
まだライフライン・チューブをパージしていないので、比較的電力は使いたい様に使える。彼女は高出力ストロボの電源を入れ、光が届く限界、恐らく三十メートル程だろうが、その程度まで先の海中まで見えるようにした。が、小魚の群れが驚いて距離を取っただけで、その他にめぼしい生体は居なかった。
と、通信機からヨルクの声がする。
「ストロボ使ったな? 電圧が上がったぞ」
「平気でしょ」
「今日は少し長めに潜ってもらう予定なんだ。無駄遣いしないでくれ」
「ドイツ人はマメね」
言いながら嘆息して、ガリーナはストロボのスイッチを切った。途端に視界は闇に染まった。光に慣れてしまった目が、暗い闇を一層暗くする。
「あと五十メートルも潜れば、嫌でも光を使うんだ。ちょっと我慢してくれ。それと、国籍で人の性格をカテゴライズするのは止めてくれ」
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