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 ロックが外れ、潜水球が着水後、すぐに無数の気泡に包まれる。が、やがてそれも全て消え失せる頃には、ガラスの球体は既に震度二十メートルまで沈下していた。ガリーナは、久々に視界に群れている魚類を見て、人心地着いた思いだった。  しかしそこから更に五十メートル程潜り、エメラルドグリーンの海が徐々にマリンブルー、そして黒みがかった紺色へと変遷するにつれ、彼女の緊張は高まっていく。魚が姿を消していき、その代わりに現れうる、人魚という存在に対する、特別な感情。  恐怖とも畏怖とも違う、しかし関わる事を避けたいという感情、そして同時に、すぐに出会ってその目で拝みたい、という感情がないまぜになる。  ガリーナはそのまま目を閉じ、今日の目標海底深度である三百メートル地点まで眠る事にした。一人乗りのシーオの計器に異常が無いか、危険は迫っていないかなどを常に確認する必要があるのだが、彼女はそれよりも、深海に目を向ける事の方が怖かった。  汚染が始まったのは、約四半世紀前だった。     
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