4  ×××

1/11
44人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ

4  ×××

「初めに疑問に思ったのは、人魚が予期せぬ繁殖をしていると政府が公表した時からだ」  潜水球に乗ったガリーナは、真っ暗闇の中、ヘッドセットから流れるヨルクの言葉を聞いていた。彼が座っている無線機は、狭い無線室の中にある。緊急時のみ、部屋のドアを開けて大声で誰かを呼ぶ必要があるが、それ以外は基本的に、彼とガリーナの会話を誰かが盗み聞きする事は無い。  それでもヨルクは、少し声のトーンを落として話していた。 「クマムシという環境の変化に対して途方も無く耐性を持つ生き物のDNAを取り入れておきながら、たった五年で人魚がその生態を変えるものだろうか。極寒の地から、深海底から吹き出す超高温の噴水にまで耐性を持つクマムシのDNAが」 「でも昨日貴方は……」     
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!