同窓会、そして、告白。

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 それは、園田千晶(そのだちあき)が高校の同窓会に参加した時のことだった。  その日の同窓会には、千晶の高校時代に特に仲の良かった友人二人がインフルエンザと親戚の葬式でそれぞれ欠席し、欠席理由のない千晶だけがしぶしぶ出席していた。  洒落た居酒屋で行われた会の序盤、元同級生らは千晶が孤立しないよう、ぼちぼち話かけてくれていたが、中盤以降になると皆、仲の良かった者同士だけで話すようになり、そうなると千晶は一人、ちびちびとハイボールを飲み、つまみを突き、暇を持て余すしかなかった。そんな時である。ビールを片手に梶野理(かじのさとる)が千晶の横の席に腰をおろしたのは。 「園田さん、暇そう」 「…仲良かったコたちが、揃って来れなくなっちゃったから」 「こっちも。室屋(むろや)、仕事のトラブルで欠席だって」  千晶は、いつも二人でばかりつるんでいた高校時代の梶野と室屋の姿を思い出した。あの当時の梶野の印象は「大人しい」一辺倒だったが、今隣に座ってきた彼は、服装や雰囲気はやや地味ではあるものの、二十代後半の年相応に頼もしさを感じさせる男性になっていた。 「お互い友達が少ないと、こういう時辛いね」 「まぁね。でももうガキじゃないから、話題なんて誰とだって見つけられるけど。園田さん、今、何してるの?」 「今?ハイボール飲んでる。…派遣社員。お客様窓口、ていうか、クレーム対応?です」 「あ、奇遇。俺もクレーム係」 「梶野君も派遣?」 「いや、社員。派遣の人とかをまとめてる立場というか…課長代理」 「えっ?二十代で?」  千晶は自分の派遣先の上司を思い浮かべた。千晶の座る場所から遥か上座に居るその人は代理ではなく正式な課長だが、確か五十過ぎではなかっただろうか。 「そんな大きい会社じゃないから」  そう言う梶野から会社名を聞けば、テレビコマーシャルでも頻繁に聞く社名で、梶野が謙遜していることは明らかだった。 「同期よりは出世が早かったかな」 「梶野君…凄いねぇ」  同じ高校を卒業して十年後、かたや派遣社員かたや課長代理。その差に千晶は溜め息を吐いた。
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